「もう少し安くなりませんか」という言葉は、想定内であるかもしれませんが、どのタイミングで出てくるのか…ちょっとヒヤヒヤしますよね。
提案が終わって、さあ進めましょうというタイミングで出てくることもあれば、最初の問い合わせの段階から予算の話になることもあります。
そのたびに値引きで対応していると、気づいたときにはじわじわと仕事の採算が合わなくなってしまうことも。
それでも断りにくくて、結局は値を下げてしまう。そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ただ、「安くしてほしい」という言葉の裏側をよく考えてみると、「とにかく金額を下げてほしい」という意味合いが大きいかもしれませんが、価値と価格のバランスに納得いただけていないということがあります。
値引き以外の選択肢も視野に入れていくことで、できる対応が増えていくかもしれません。
「安くしてほしい」の裏にある、本当の気持ち
お客様が値引きを求めるとき、その背景にはいくつかのパターンがあります。
ひとつは、純粋に予算が足りないケースです。やりたい気持ちはあるけれど、用意できる金額に限りがある。このパターンは比較的わかりやすいです。
ただ、もうひとつのパターンもあります。それは「この金額を払う価値があるかどうか、まだ確信が持てていない」という状態です。
提案の内容は悪くないけれど、投資に見合うリターンがイメージできていない。だから、リスクを下げるために金額を下げようとしているという心理です。
この2つは似ているようで、まったく別の話になります。
前者には予算に合わせた提案が必要ですが、後者に必要なのは「価値を伝え直すこと」。
値引きをしても、根本的な不安は解消されないからです。
価値が伝わっていないのか、予算が合わないのかを見極める
まず大切なのは、どちらのパターンかを見極めることです。
「予算はどのくらいをお考えでしたか?」と率直に聞いてみることが、一番の近道です。
予算に大きなギャップがある場合は、スコープを調整する方向で話を進めます。
一方で、「だいたいそのくらいは用意できる」という反応であれば、価値の伝え方を見直すタイミングです。
「なぜこの金額なのか」を丁寧に説明できているかどうか、お客様が求めている価値のレベルはどれくらいなのか、改めて振り返ってみる必要があります。
制作にかかる工数や、その背景にある判断の理由、品質保証の説明が伝わっていないと、お客様には「なんとなく高い」という印象だけが残ってしまいます。
値引き以外でできる、3つの対応
値引き以外の選択肢として、現場で使いやすいものを3つ挙げてみます。
1.スコープを分けて段階的に進める
最初から全部やろうとするのではなく、「まずここだけやってみましょう」という提案です。
予算が限られている場合、優先度の高い部分から着手して、成果が出てきたら次のフェーズに進む。
このやり方は、お客様にとってもリスクが下がりますし、信頼関係を積み重ねながら仕事を続けやすくなります。
2.費用対効果を具体的に示す
Web関連を例にすると、「このサイトで月に問い合わせが3件増えれば、制作費は1年で回収できます」というように、投資に対するリターンを具体的な数字で示してみることです。
そうすると、同じ金額でも受け取られ方が変わることがあります。
漠然と「効果が出ます」と言うより、ずっと伝わりやすいですよね。
3.何が含まれているかを丁寧に説明する
見積もりの金額だけを提示していると、お客様には「高い安い」の判断しかできません。
この金額の中に何が含まれていて、どんな工程を経て作られるのかを伝えることで、「それだけのことをやってくれるなら納得できる」という反応になることがあります。
値引きに応じ続けると、何が起きるか
値引きをすること自体が悪いわけではありませんが、ただ、安易に値引きを続けると、いくつかの問題が起きてきます。
まず、採算が合わなくなります。値引きした金額で受けた仕事は、どこかで工数を削らざるを得なくなります。
結果として、アウトプットの質が下がり、お客様の満足度にも影響します。
また、「この会社は言えば下げてくれる」という印象がついてしまうと、次の提案でも同じことが繰り返されやすくなります。
値引きが当たり前の関係になると、価格ではなく価値で選んでもらうことが難しくなっていきます。
「断る」ことも、ひとつの誠実さ
予算がどうしても合わない場合、無理に受けないという判断も大切です。
予算に見合わない条件で仕事を受けても、結果的にお互いにとって良い経験にならないことが多いからです。
「この予算ではご希望の内容をお届けすることが難しいです。
ただ、予算に合わせてできることをご提案することはできます」という伝え方は、誠実さとして受け取ってもらえることがあります。
無理に受けて中途半端なものを届けるより、正直に話したほうが、長い目で見て信頼につながっていくのではないでしょうか。
価格の話は、価値の話でもある
「安くしてほしい」と言われたとき、すぐに金額を動かすのではなく、一度立ち止まってみてください。
その言葉の背景に何があるのかを考えると、値引き以外のアプローチが見えてくることがあります。
価格の交渉は、突き詰めると「この仕事にどれだけの価値があるか」という話でもあります。
その価値をきちんと言葉にして伝えられるかどうかが、選ばれ続ける仕事につながっていくと思っています。