哲学というと、抽象的でわかりにくい、堅苦しい、何に役立つのかわからない、学者たちが議論している・・・などのイメージを持たれ、日常生活のどの部分で使われているのかわからないという話をよく聞きます。
今、高校生の科目に「公共」があり、先哲たちの教えから「ものの見方」は1つではないということを学ぶのですが、その中に「思考実験」というのがあります。
自分の意見を主張することも大事ですが、ものの見方を変えてみると・・・「あっ。こういう考え方もできるのか」という思考は今の時代に必要なことかもしれません。
起業家たちは、読書量が多い傾向ですが、経済や専門分野だけでなく哲学に通じるものなど思考の幅を広げています。
哲学の思考実験からビジネスの幅を広げることにも役立つので、ぜひ少し「考える」ことをしてみませんか。
思考実験から学ぶものの見方
思考実験とは、頭の中でシナリオを設定し、仮想的な状況に基づいてその結果や影響を予測する手法です。
例えば、有名な例として「テセウスの船」「トロッコ問題」「囚人のジレンマ」などがありますが、その中の「テセウスの船」という思考実験について考えてみます。
「テセウスの船」の思考実験は、は「同一性」と「変化」について考える古代ギリシャの哲学的な問題で、答えはありません。
内容としては、テセウスの船が航海を終えた後、時間が経つにつれて、船の木材が腐ったり、壊れたりしていきます。そこで、船の部分を少しずつ新しい木材で交換していくと、最終的には元の船の全ての部品が新しいものになってしまいます。
時間とともに部品がすべて新しいものに交換されると、次のような問いが生まれます。
【新しいものに交換された船は「テセウスの船」と言えるのか?】
すべての部品を交換した場合、船は前と同じように「テセウスの船」と言えるのか?それとも、新しい船になってしまったのか?
答えはないんですよね。
考え方によって「何が同じ」で「何が違う」のかの基準が異なるからです。日常生活でも、人間だって細胞が日々変わり、以前の自分ではないのか?と言われると、本質的には自分のままですが、個体としては変化している・・・。
考えると深いですよね。様々な見方があってよいという例です。
ほんの一例ですが、「自分はこうだ」と思っていても、他人は違うものの見方をしているということをまず知ることが大切です。
そういう意味でも、哲学は深い学問だと気づかされます。
ビジネスの幅を広げる可能性も
思考実験は実際に行動せず、仮想的な状況を通じて物事を考察する手法ですが、ビジネスで「もしこの決定をまったく違う立場の人が見たら、どう感じるだろうか?」と問いかけることで、異なる視点で考えることができます。
顧客や競合、あるいはまったく別の業界の人々の立場から考えてみると、自分が見落としている問題点や新たなチャンスが浮かび上がることがあります。
「もしこの製品が全く異なる目的で作られたものだったら?」という思考実験を行うことで、従来の発想にとらわれない新しいデザインやアイデアが生まれる可能性もでてきます。
哲学は難しい、考えることが面倒くさいと思うかもしれませんが、身近な例で考えてみると、違う視点で物事をみる大切さに気が付きます。
正解はないので、周囲の人の意見も聞いてみるとまた自分とは違う発想を持っていることがわかるかもしれません。
「テセウスの船」以外の思考実験もぜひ調べて考えてみてください。