職場やチームで仕事をしていると、無言の気まずい雰囲気であったり、自分だけが発言していない場合、「もっと自分の意見を言わなきゃ」「ちゃんと説明しなきゃ」と焦ることがありませんか。
もちろん、伝える力も大切です。でも、実際にチームをまとめたり、人から信頼されたりする人をよく見ると、「話す力」よりも「聞く力」が高い人が多いように感じます。
相手の話を最後まで聞き、うなずきながら「なるほど」と受け止めてくれる人。そんな人がいるだけで、場の空気がやわらかくなり、安心して話せる雰囲気が生まれます。
「この人なら話しても大丈夫」と思われること、話すより聞くことが信頼をつくっていくのかもしれません。
「聞いているつもり」になっていませんか?
多くの人が、「自分はちゃんと聞いている」と思っています。
でも、よくよく考えてみると、相手が話している途中で「どう返そうかな」と考えてしまったり、「それは違うと思う」と心の中で反論を準備していたりしませんか?
これは“聞いているようで聞けていない”状態です。
相手の話を途中でさえぎったり、「でも」「つまりさ」とすぐにまとめたりすると、話す側は「最後まで聞いてもらえなかった」と感じます。
それが積み重なると、「どうせ言ってもムダ」と思われてしまうことも。信頼を築くには、まず“話を奪わない”こと。
相手の言葉を最後まで聞くことから始まります。
相づちより「質問」で関心を示す
会話をしていて、「そうなんですね」「なるほど」と相づちを打つだけでは、少し物足りないこともあります。
相手が「本当に興味を持ってくれている」と感じるのは、実は“質問されたとき”です。
たとえば、「それはどう感じたんですか?」「そのあとどうなったんですか?」と、相手の気持ちや考えを引き出すような質問をすると、自然に会話が深まります。
ポイントは、尋問のように聞くのではなく、「もっと知りたい」という姿勢で聞くこと。
このちょっとした違いで、相手の表情が柔らかくなり、信頼関係がぐっと近づきます。
また、質問することで自分の理解も深まり、チームとしての意思疎通がスムーズになります。
ただ、意識を持って聞くことは情報を集め、自分で一度頭で考える必要があるため、簡単に身につくものではありません。
でも、わからなければ正直に「わからない」ということを伝え、わかろうとする努力の姿勢を見せることが大事なポイントです。
聞く姿勢がチームの空気を変える
チームに「聞いてくれる人」がいると、安心感が生まれます。
意見の違いがあっても、まず受け止めてもらえるという信頼があると、人は前向きに話すことができます。
たとえば、部下や同僚が「ちょっと相談があるんですが」と声をかけてきたとき、「今忙しいから後で」と言ってしまうと、その一瞬で距離ができます。
逆に、「今は少し時間がないけど、あとでゆっくり聞かせて」と一言添えるだけで、印象はまったく違います。
聞く姿勢がある人のまわりには、自然と人が集まります。
話しやすい雰囲気ができると、相談や情報共有が増え、トラブルも早く見つけられるようになります。
つまり、聞く力がある人がいるチームは、問題解決のスピードも速くなることにつながっていきます。
聞く力は「技術」ではなく「姿勢」
聞く力というと、スキルやテクニックのように思われがちですが、実際は「相手を尊重する姿勢」そのものです。
相手の話を遮らない、最後まで耳を傾ける、相手の立場に立って考える。この3つを意識するだけで、会話の質が変わります。
そして何より大切なのは、「理解しよう」とする気持ち。
相手の意見に完全に同意できなくても、「そういう考え方もあるんだね」と受け止めることで、関係性はずっと穏やかになります。
チームで成果を出すためには、誰か一人がリーダーシップを取るだけでは不十分です。
一人ひとりが「聞く力」を少しずつ磨いていくことで、チーム全体が成長していきたいですね。
「聞く」というのは、誰でもできるようでいて、実はとても奥が深いことです。特別なトレーニングをしなくても、今日からできることはたくさんあります。
相手の話を最後まで聞く、リアクションを丁寧に返す、少しだけ質問をしてみる。
そんな小さな積み重ねが、チームの雰囲気を変え、人とのつながりを豊かにしていきます。
聞く力は目立つ行為ではありませんが、仕事も人間関係も支える“静かなリーダーシップ”を試してみませんか。