「若手が指示を出すまで動いてくれない」「異動してきた人が主体性を出してくれない」。こんな声は、どこの会社でもよく聞きます。
つい「やる気がないのかな」「能力が低いのかな」と思ってしまいがちですが、実際にはもっと複雑な背景があります。
指示を待っているように見えるからといって、簡単に「使いづらい人」と決めつけず、少し状況を見てほしいと思います。
中には、自分で考えて行動することができない人もいるかもしれません。しかし、社内にいると長年の慣れが当たり前となり、指導する側が意外に気付いていない場合があります。
「どう動けば正解なのかが分からない」という状態に陥っていることもあり、本人の性格よりも、会社の空気がそうさせているのではないか?ということも気にしてみてください。
立場が変わると、人はまず“様子を見る”
新しい部署に異動したり、契約社員として入社したりすると、どんなに経験がある人でも一度「様子を見る側」に回ります。これは自然な反応です。
この案件は自分の判断で進めていいのか。どこまで踏み込むと「熱意」になり、どこからが「余計なお世話」になるのか。今このタイミングで質問しても大丈夫なのか。こうした細かな迷いが積み重なると、頭の中が状況判断でいっぱいになり、行動に使う余力がなくなってしまいます。
指示を待つという行動は、怠慢ではなく「事故を起こさないための安全策」になっていることも多くあります。
性格によっては、突っ走り型のタイプもいるため、コミュニケーションが必要となりますね。
「聞けない空気」が人を止める
「分からないなら聞けばいい」と言いたくなる気持ちも分かります。でも、現場には「聞きたいのに聞けない」空気が存在します。
忙しそうな上司の背中。何度も質問してしまった引け目。前の部署では普通だったことが、ここでは非常識かもしれないという不安。特に経験がある人ほど、自分の無知を見せることを怖がります。
その結果、「指示が出るまで待つ」という選択が最も安全に感じられるようになることもあります。
失敗への反応が行動パターンを決める
新入社員が最初は積極的に動くのに、だんだん静かになることがあります。これは、失敗したときの周囲の反応が大きく影響しています。
「なんでこんなことしたの」「勝手に判断しないで」と詰められる経験が続くと、人は学びます。「動かない方が安全なのでは・・・」という思考になってしまいます。
逆に「チャレンジしてくれていいね。次はこうしてみようか」と返してもらえれば、また動こうと思えます。
行動パターンは、本人の性格よりも、周囲の反応によって形づくられていくこともあります。
みんなが同じ方向に向かっていると思いきや、他の人の思考回路が自分と同じではない、受け止め方も様々だということを認識していないとすれ違いが起こってしまいます。
判断基準が曖昧だと、人は止まる
「自分で考えて動いて」と言われても、判断基準が見えなければ動きようがありません。
例えば、「お客さんのためになることをしてほしい」と言われても、どこまでが許容範囲なのか。どの金額までなら自分で決めていいのか。こうしたラインが曖昧だと、結局「上司に聞こう」となります。そして聞けば「そんなことも判断できないのか」と言われる。この悪循環が指示待ちを生むことにつながります。
優れた上司は「この範囲なら任せるよ」と境界線を示し、「迷ったらこの軸で考えてみて」と判断材料を渡します。その安心感が、人を動かす力になります。
言葉だけではないコミュニケーションが必要でもありますね。
評価の仕組みも行動を左右する
挑戦した人より、無難に過ごした人の方が評価される会社では、誰も動かなくなります。
表向きは「挑戦を評価する」と言っていても、実際には失敗が減点される仕組みになっていることも。
社員はこうした矛盾を敏感に感じ取ります。自律的に動く組織をつくりたいならば、挑戦したプロセスそのものを評価する姿勢が必要となってきます。
意見が言えない空気も指示待ちを生む
会議で「何か意見ある?」と聞かれても誰も発言しない。これは、意見を言っても否定されたり、結局上司が全部決めたりする経験が積み重なった結果です。
意見を求めるならば、どんな意見も尊重する姿勢を見せることが大切。全部採用する必要はありませんが、「その視点は面白いね」「一部取り入れてみよう」と返すだけで、次の発言につながりやすくなります。
場の雰囲気づくりも発言のしやすさにつながります。
優れたアイディアをオープンにしていく雰囲気があれば、会社自体にも良い影響を与えていくものです。
結局は会社の空気が人を動かす
指示待ちが生まれる最大の原因は、個人の性格ではなく「会社の空気」なんですよね。
上司が細かく指示を出しすぎたり、失敗を許さなかったり、意見を聞かなかったりすると、人は自然と動かなくなります。
人は環境に適応する生き物。指示待ちが広がっているなら、それを生み出す空気があるということです。
その空気を変えられるのは、やっぱり上の立場にいる人ではないでしょうか。
動ける人を増やすために必要なのは“待つ力”
人が本当に自分で動けるようになるまでには、周囲を観察し、自分なりのやり方をつくるための時間が必要です。
この期間を「指示待ち」と決めつけて急かすか、「準備期間」として見守るかで、その後の成長は大きく変わります。
指示待ちは悪ではありません。組織のどこかでコミュニケーションが詰まっていることを知らせてくれるサインという捉え方もできます。
その背景にある不安や迷いに目を向けることが、結果として「自分で動ける人」を増やす一番の近道になるのかもしれません。