光にかざすと浮かび上がる模様の「すかし」は、紙幣や証明書などの偽造防止のために古くから活用されてきています。新紙幣が出るたびに様々な新技術が施されて、日本の紙幣のすかし技術はレベルが高いと言われています。
デジタルの世界でも、画像や動画、スライド資料の背景に、ロゴや文字を半透明である「すかし」を配置することで、第三者に勝手に利用されるのを防ぎ、自分の著作物であることを示すことができます。画像販売やデジタル写真などで見たことがあるかもしれません。
インターネット上では、画像や動画、PDFファイルが一瞬でコピー・保存ができ、作業面ではとても効率よく便利である反面、誰かが無断で転載したり、加工して再利用してしまうリスクがあります。
実際に、SNSや動画サイトでは「オリジナルの作成者が分からない」資料や画像が拡散されるケースが少なくありません。スライドや企業の広報資料など、知らないうちに他人の講演やセミナーで使われてしまうこともあり、オンライン上に出たものの管理は不可能です。
時間をかけて作った成果物が自分の名前を外されて流通するのは、とても悔しいことです。
すかしが果たす自己防衛の役割
こうしたリスクに対してできる自己防衛の1つが「すかし」を入れること。たとえば、資料の背景に会社のロゴを薄く繰り返し配置したり、画像の端に小さくブランド名を記載しておくことで、他人は簡単に流用ができなくなります。
もし無断でコピーされても、すかしが残っていれば「どこから来たものか」が明確になるため、トラブル防止や抑止力として働きます。
すかしには「ブランドを守る」という意味合いもあり、動画の右下に常にロゴを表示しておくと、そのコンテンツが自社の正式なものだと視聴者に伝わります。
ちょっとした工夫ですが、信頼性を高める効果もあるので、ひと手間でも資料作成の時にはぜひ取り入れてほしいと思います。
プレゼン資料や動画での実践方法
視聴者側として気が付きにくいかもしれませんが、自己防衛を意識してみると、すかしを活用する場面は意外にも多くあります。
プレゼン資料の場合、全ページに社名やロゴを背景として入れておくと、配布後に不正利用される可能性が下がります。
特にPDFにした場合は、画像として切り取られるリスクがあるため、各ページにすかしを入れると加工がしにくくなり、有効です。
動画の場合は、画面の隅にロゴを常時表示するのが一般的です。テレビ番組でよく放送局のロゴが表示されているのも、まさにこの理由です。
視聴者に「誰のコンテンツか」を伝えると同時に、無断転載や編集の抑止力になります。
Web画像では、商品写真やオリジナルイラストに透かし文字を入れるケースがよく見られます。特にECサイトやSNSでは、画像だけを転載されやすいため、ブランド名やアカウント名を半透明で配置することも効果的です。
気をつけたいポイント
とはいえ、すかしは入れればいいというものではなく、注意するべき点もあります。
すかしの濃さ、大きさ、量、配置は、デザインのバランスを崩しかねません。入れすぎると、本来伝えたい内容が見えにくくなってしまいます。
ユーザーにとってストレスになるため、半透明にして自然に馴染ませる工夫が大切です。
配置場所も画像の端に小さくロゴなどを入れるだけでは簡単に切り取られてしまうため、大事な資料や写真の場合は、背景全体に繰り返し入れるなど、編集ソフトで消しにくい形にしておくなど、用途によって工夫が必要です。
読みやすさと防止効果の「ちょうどよいバランス」というのが難しいですね。でも何かしらの対策を施さなければ、自分が意図しないところで勝手に使用されてしまうということを覚えておいてほしいと思います。
すかしは、単なる装飾ではなく、デジタル時代における「自己防衛の道具」です。インターネット上に公開するものは、誰かにコピーされる可能性を常に意識しなければ、簡単に流用されてしまいます。
そのリスクを減らして、自分が生み出しだものを守るために、すかしをぜひ取り入れてみてください。
プレゼン資料、動画、Web画像など、あらゆるコンテンツで応用できるすかしは、小さな工夫で大きな安心を生み出します。著作権を守り、ブランドの信頼性を高めるためにも、日常的に活用していきましょう。